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カイユボット展

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カイユボット展
ブリヂストン美術館
開催期間:2013年10月10日ー12月29日
サイズ:A3(二つ折りA4サイズ)
上:ギュスターヴ・カイユボット <ヨーロッパ橋> 1876年 プティ・パレ美術館蔵



 モダンなパリの象徴といえば、<駅><鉄の橋><汽車>などもその一つだった。鉄の建造物は当時のフランス技術の最先端を、駅は鉄道の広がりを誇らしげに示している。
 新しく変貌するパリに魅了されていたカイユボットは、そうした場面を生き生きと取り上げている。今ならもしかすると醜いと言われかねない鉄の欄干が、大胆な対角線の構図で迫ってくる。そのことから、当時のフランスの画家たちが大きな関心を寄せていた日本の浮世絵の構図に強い影響を受けているといわれるのも頷ける。
 ヨーロッパ橋は一八六五~六八年にかけてパリ都市計画の一環として造られた。鉄の欄干は少し変わったが、現在も健在だ。
 オペラ座から少し北東に寄ったサンラザール駅の裏側にかかっていて、ウィーン、サンクトペテルブルクなどヨーロッパの主要都市の名前が付いた通りが、ヨーロッパ橋から放射状に伸びている。
 今もこの陸橋の下を、汽車に代わった電車が毎日行き交っている。
 当時、サンラザール駅はパリ郊外の行楽地として人気になったアルジャントゥィユや、遠くは避暑地ノルマンディーへでかける起点だった。
 鉄道の敷設が盛んに行われた十九世紀。大西洋側の海岸の町ドーヴィルなどは避暑地として開発が進み、ヴァカンス客が盛んに出かけるようになった。汽車に乗る、それはお洒落な行為だったのである。
 そんなお洒落な汽車に乗ることを夢見ながら、一人の労働者が陸橋の欄干に頬杖をついて橋の下を見ている。画面には描かれていないが、サンラザール駅を汽車は煙を吐きながら走り去り、あるいは何処か遠くから駅に滑り込んでくる。タブリエと呼ばれる作業用の上っ張りを着ている男は、いつか、汽車に乗って海辺の避暑地に行きたいのだろう。だが毎日の生活に追われ、それはなかなか実現しないかもしれない。
 一方、画面左のカップルは裕福そうなエレガントな身なりをしている。男はカイユボット自身である。彼は裕福な階層に属していた。シルクハットをかぶり、ルダンゴト(フロックコート)を着ている。連れの女性は黒いアフタヌーンドレスを着てパラソルを持っている。
 アフタヌーンドレスの襟元はぴったりとしたハイネックで手袋をはめている。昼間の服で膚を見せるのはエチケット違反だったが、彼女は夜ともなれば胸元を大きく開けた(デコルテ)ドレスを着て舞踏会やオペラにでかけるのだろう。 (深井晃子 『名画とファッション』 小学館ショトル・ミュージアム 1999年)

by ephemera-art | 2017-05-02 00:00 | ブリヂストン美術館