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印象派と20世紀の巨匠たち

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印象派と20世紀の巨匠たち モネ、ルノワールからピカソまで
ブリジストン美術館
開催期間:2005年1月25日ー7月10日
サイズ:A4
表:ルノワール <座るジョルジェット・シャパルティエ嬢> 1876年 ブリヂストン美術館



 天衣無縫なポーズが可愛らしい。彼女、ジョルジェットの父は、当時の人気作家ゾラやモーパッサン、ゴンクール兄弟らの作品を出版していたパリでも有数の出版社シャルパンティエ社の経営者である。
 その妻、つまり彼女の母は社交界の花形で、自らも第一級の文芸サロンの主宰者だった。画面の中の重厚な絨毯や調度品からもそうした富裕家庭の様子がうかがえる客間で、夫妻の長女ジョルジェットがポーズをとっている。彼女四歳の肖像画である。
 貧乏画家のルノワールが上流のサロンに出入りするようになったのは、一八七五年にシャルパンティエ氏が彼の絵を買ったのがきっかけだった。それから夫妻はルノワールに家族の肖像などを依頼し始める。
 背中に大きなリボン結びが見えているブルーのドレスにはシックなブロンド色が配されている。子供服にしては洗練された心憎いフランス風センスである。肩にかかる柔らかそうな素晴らしいブロンドの髪の色、この画面の中で最も印象的な濃いブルーの目の色と完璧なハーモニーを見せている。そこにアクセントをつけているのは白いレースの縁取りと赤いサンゴのネックレス。このころ大人の女性服はまだ十九世紀らしい大げさな装いの総仕上げをしようとしていたが、少女服は一足先を行っていて、二十世紀の服と比べて、もうそれほど大きな違いがない。
 彼女の可愛らしさを生き生きと伝えて、肖像画以上の特別な魅力をこの絵に与えているルノワールのルノワールらしい絵である。彼はこの時代の他の画家たちと違って、近代がもつ孤独や倦怠感を露骨に描かなかった。そのことですべてのものを薔薇色に描くと、ときには非難されたルノワールだが、子供を描くときこそ喜びに満ちた現実の世界を思う存分に描くことができて、幸せだったのだろう。
 この二年後、ルノワールは「シャルパンティエ夫人とその子供たちの肖像」(一八七八)で、六歳になったジョルジェットと四歳の弟を描いている。 (深井晃子 『名画とファッション』 小学館ショトル・ミュージアム 1999年)

by ephemera-art | 2017-07-18 00:00 | ブリヂストン美術館