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北斎の富士

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北斎の富士 冨嶽三十六景色と富嶽百景
美術館「えき」KYOTO
開催期間:2012年1月2日-1月22日
主催:京都新聞社
サイズ:A4
表:葛飾北斎 <冨嶽三十六景 神奈川沖波裏>(部分)



 北斎の絵の独創性は、代表先「神奈川沖浪裏」(「富嶽三十六景」より)によく表れています。西洋人はこの図をザ・グレート・ウェーヴ=「大浪」と呼んで親しんでします。房総(千葉県)でとれた野菜や生魚を江戸市民の台所へ直送する快速船を「押送船」といっていました。快速船といっても、底の浅い船を大勢の漕ぎ手が懸命に櫓を漕いでボートのように走らせるもので、大波に出会ったらひとたまりもありません。図は、その有様を描いたもので、画面左に大波が、立ち上がった熊のような格好で、船に襲いかかろうとしています。漕ぎ手たちは、ちょんまげの頭を下げてその恐怖に耐えようとしています。海上はるかに泰然とした富士の姿・・・・・・。「この波は爪だ。船がその爪に捕らえられているのを感じる」。ゴッホの弟テオは、アルルにいた兄にこう書き送りました。
 日本美術の再発見者であるフェノロサは、こうした北斎のアニミスティックな視覚について、次のように指摘しています。
 「われわれは、若いときから彼の画集に親しんで、二本とはこんな不思議なところだと思っているが、実際はそうではない。それは、彼自身の空想(ファンタジー)の産物であり、北斎イズムへと翻案された世界なのだ」。
 若冲同様、北斎は自然の姿を彼のファンタジーで変容させます。そして、若冲の絵に見られなかったドラマチックな表現をそこに加え、見るものをギョッとさせるのです。 (辻惟雄 『ギョッとする江戸の絵画』 羽鳥書店 2010年)

by ephemera-art | 2018-04-04 00:00 | 美術館「えき」KYOTO