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2016年 10月 08日 ( 1 )

貴婦人と一角獣展

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貴婦人と一角獣展
国立新美術展 公式サイト
開催期間:2013年4月24日ー7月15日
主催:国立新美術館・フランス国立クリュニー中世美術館・NHK・NHKプロモーション・朝日新聞社
サイズ:A3(二つ折りA4サイズ)


 「ここにつづれ織がある。アペローネ、有名な壁掛のゴブラン織だ。僕はお前がここにいると想像しよう。ゴブラン織は六枚ある。さあ、これから一緒に、ひとつひとつゆっくり見てゆこう。まず一歩さがって、一度に全体を眺めてごらん。しんと非常にしずかな感じだね。ほとんど変化らしい変化もない。目だたぬ紅色の地は、いっぱいに草花が咲きみだれ、小さな動物が思い思いの格好で散らばっている。ほのかに楕円形をした藍色の島が、そこから浮び出ているところは、六枚ともみんなおんなじだ。」
 これは、リルケの『マルテの手記』のなかの文章である・孤独なパリ生活を送っていた頃の若きリルケは、クリュニイ美術館にしばしば足を運んで、そこに陳列されている、あの有名な十六世紀初頭のゴブラン織の傑作『一角獣と貴婦人』の図を眺め、恍惚とした詩的な夢想にひたっていたらしい。
 詩人の手ごろな解説によって、わたしたちは、六枚のゴブラン織の構図をほぼ正確に知ることができる。もう少し引用してみよう。
 「島のなかには、きまったように一人の女が見える。衣装はそれぞれ違っているが、みんな同じ女にちがいない。ときに、侍女らしい幾らか小柄な女のすがたが、傍らに添えられていたりする。そして必ず島の上には、紋章を支えた動物が大きく織り出されているのだ。左側にはライオン、右側には明るい色調の一角獣。」
 ヨーロッパの伝統に古くから登場する一角獣は、森のなかで無敵の強さを誇っているが、ただ処女にだけは弱いといわれている。というのは、この神話的な生きものは、純潔と無垢とに惹きつけられるからである。猟師たちは、このふしぎな獣を捕えるために、囮として、一糸まとわぬ処女を森の奥につれてゆく。ふだんは兇暴な動物も、処女のすがたを認めるや、たちまち魅惑され、惹きつけられて、処女の膝にその頭をのせ、すっかり従順になって、うとうと睡ってしまう。物かげで窺がっていた猟師たちは、難なくこれを捕えることができるという。──パリのクリュニイ美術館のゴブラン織も、むろん、この伝説に基づいたものであろう。
(中略)
 さて、ふたたびクリュニイ美術館のタペストリ(壁織物)に話をもどそう。
 この織物は、十六世紀のごく初め、中部フランスのアルシイの領主であるル・ヴィスト家の娘クロオドの結婚式の折りに、新郎であるジャン・ド・シャバンヌの註文によって製作されたものである。最近の研究によると、花嫁のクロオドハ「、「ジョフロワ・ド・バルザックという者の未亡人で、この結婚は二度目のそれでったらしいことが明らかになっている。
 壁織物は十九世紀の末まで、ブーサック(クルウズ県)の城に所蔵されていて、メリメやジョルジュ・サンドがこれを初めて世に知らせたわれているが、現在はクリュニイ美術館で一般に公開されている。 (澁澤龍彦 『幻想の画廊から』 青土社 1979年)

by ephemera-art | 2016-10-08 00:00 | 国立新美術館 | Comments(0)